今日はね、ルイボスティーにしてみたの。温かくて、ホッとする香りがするでしょう?このお茶に合うのはね、やっぱり、ゆったりとしたクラシック音楽かしら。
今かけているのは、クロード・ドビュッシーの「サクソフォンと管弦楽のためのラプソディ」という曲。
サックスの音色が、なんだか物思いにふけるように、優しく響くわね。この曲を聴いているとね、いつも思い出すお話があるのよ。
猫の王室にいたシャム猫のアンディくんの話。彼は、あまり言葉で気持ちを伝えるのが得意じゃなくてね。
口下手で、自分の感情をいつも音楽に乗せて伝える子だったの。

猫の王室には、戴冠式だとか、大切な行事のために音楽を作曲する特別な役職があってね。王室に捧げる音楽だから、それはもう格調高くて、品のある作品ばかりが揃っているのよ。
そんな中に、サックスを吹くのが得意なシャム猫のアンディがいたの。
言葉じゃなくても、心が通じ合えればいい。
そういう優しい空気が、猫の王国には流れていてね。
ある夕暮れのことだったわ。ルル王女が、庭の隅っこで一人ぼっちで泣いていたの。誰にも見られないように、そっと肩を震わせてね。その姿を、たまたま通りかかったアンディが見つけてしまったの。
アンディは、言葉をかけることができなくて、どうしたらいいか分からなかった。
でも、ふと閃いたのよ。そっと隠れて、サックスを取り出して、優しい音色を奏で始めたの。
悲しい気持ちにそっと寄り添うような、心温まる音楽。
どこからともなく聞こえてくるその音色に、ルル王女は涙が止まり、心がじんわりと癒されていったのよ。
アンディの優しい気持ち、お前さんにも聞こえたかしら?

ガチョウのおばあさんのお名前は、Ms.Doily Maple(ドイリー・メープル)です。 編み物が得意で、童話と、ミステリー推理小説が好きなおばあさんです。おばあさんには秘密は隠せません。
そして、こちらのお話は、本編『クマになった少年 ベンの家と猫の王国』とは少し異なる、短編のご紹介物語です。猫の王国に暮らす個性豊かな仲間たちを、ガチョウのおばあさんが紹介します。 ひとつずつ、魔法のように開く扉。登場人物たちの世界を覗いてみてください。
